野呂芳男<書評>熊沢義宣『ブルトマン』(1962)  Home  >   Archive  /  biblio


読むべきブルトマン紹介
<書評>熊澤義宣著『ブルトマン』日本基督教団出版部

 野呂芳男

  初出『興文』1962年7月号、日本基督教協議会・文書事業部


 内容的には、「ブルトマン神学の形成」「ブルトマン神学の根本問題」「将来の課題としてのブルトマン神学」と三部にわかれ、巻末に略年譜と詳細な文献表とが加えられている。

 書物全体が、まるで、ブルトマンを中心とした現代のドイツ神学史を読むような面白さを味わわせてくれるが、特に、第一部と第三部においてそうである。読者は、ブルトマンに影響を与えた人々、または、彼と対話に入った人々の名前が並べられているのをみただけで、その感を深くする。ヘルマン、ヴァイス、弁証法的神学者たち、ハイデッガー、クールマン、カムラー等々。熊澤氏によるこれらの討論の紹介は正確で、実に信頼がおける。第二部はブルトマン自身の思想を直接に取り上げている。第三部では、ケーゼマン、フックス、ボルンカム、コンツェルマン、エーベリンク等の、いわゆる「ブルトマン以後の人々」がとりあげられ、ブルトマンの問題提出がその弟子たちによって現在どのように発展させられているかを説明している。この部分は、まだこの発展があまり紹介されていない日本の教会に大いに参考になるであろう。

 熊沢氏のこの書物は、日本の教会への大きな貢献である。教職や神学生の方々にはぜひ読んでいただきたいし、信徒の方々でも(特に教会学校の先生には)神学に関心のある方々に勉強していただきたいと思う。信徒の方々は、少し硬く難しいと思われるかもしれないが、誰か適当な方に解説してもらいながらでも読んでいただきたい。最近アメリカのユニオン神学校のベネット教授に聞いたところでは、ユニオン神学校にも、ついに実存論神学者のマカリーがグラスゴー大学から招聘されてくることになったとのことである。とうとうアメリカの最もよい神学校まで、この傾向の神学が中心的な位置を占めることになった。ますます拡がって行くこの神学を知るように努力して欲しいのである。

 わたしもこの傾向に賛成している一人だが、それにしても、どうしてブルトマンの紹介の書物は皆一般的に言って難解なのだろうかと、この書物を読んでも感じた。神学は大衆化する必要があるのだが、この神学は、なかなかそうなりそうもないのではないかと溜息がでる。バルト神学の通俗化は幾多の畸形的解釈を産み出したけれども、一応成功したのではないかと思うが、これからは、実存論神学も通俗化されなければならない時期ではないだろうか。

 それから、教団の「人と思想シリーズ」の役割から言って当然であるが、今までに出版されたものもそうであったが、この熊澤氏の『ブルトマン』も、たくさんの材料を少い頁に入れるため、ところどころもう少し説明して欲しいと思うところがある。しかしこれは、やむを得ないことであろう。おそらく、熊澤氏も、フリッツ・ブリーやフリードリッヒ・ゴーガルテン等のブルトマンに対する関係をもっと書きたかったのではないかと思う。この書物はこれでよいとして、いろいろな書き込めなかった材料を付け加え、将来は更に大部な書物として出版されることを望みたい。「あとがき」の部分でブルトマンがなぜ消極的な感じのする「非神話化」ということばを棄てないかということが書かれているが、わたしも教えられて大いに参考になった。



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入力:平岡広志
http://www.geocities.co.jp/SweetHome-Brown/3753/
2003.7.7